石塔めぐり(3) 広瀬一石彫成五輪塔
こんにちは、翼石材の企画担当、高橋です。
前回、前々回と「石造物を見る私の“スタンス”」について書かせていただきました。
それでは今回から、いよいよ石造物の世界へご案内します。
記念すべき1回目は、鳥取県倉吉市広瀬ヒイデにある「広瀬一石彫成五輪塔(ひろせいっせきちょうせいごりんとう)」をご紹介したいと思います。
このブログの上部の写真を見ていただくと、手前に3基の五輪塔が並んでいますね。
そのずっと奥、離れた場所に小さく写っているのが広瀬一石彫成五輪塔です。
この五輪塔には、思わぬ幸運で出合いました。
[世伝石塔(せいでんせきとう)]シリーズで初めて五輪塔を手がけるとき、私は、
「最初だから思いきって、個性的な形の五輪塔に挑戦したいな」
と考えました。
私には石造物鑑賞の師と尊敬し、かつ親しくさせていただいている学者、研究者、郷土史家の皆さんが何人かいます。
それらの人にも、
「古い五輪塔で、面白い形のものをご存じないですか?」
と質問したところ、ある方が、
「確か鳥取に、面取の五輪塔があったはずや」と教えてくださいました。
古い文献などの情報ももらい、私は鳥取へ向かいました。
それで出合ったのが東伯郡湯梨浜町にある、面取をした「泊一石彫成五輪塔(とまりいっせきちょうせいごりんとう)」でした。それを参考に[世伝石塔]シリーズの「大面取五輪塔」を制作したのですが、これに関してはまた後日、改めてご紹介させてください。
ともかく鳥取へ行き、頂戴した情報を頼りに石造物を探して回りました。
実は当時、「鳥取に見るべき石造物はない」というのが業界内の定説でした。
ですから最初に鳥取と聞いたときは、
「とと、鳥取ですか?」
と驚いたのですが、行ってみたら文献に書かれているとおり、中世作の五輪塔や宝塔、宝篋印塔が今もたくさん残っていました。
「おいおい、なんぼでもあるやんか」
正直ウキウキでした。
歩けば歩くほど、想像だにしていなかったいい石造物がぼこぼこと出てくるのです。
ちなみに、石造物を見にいく前に市役所などへ問い合わせたら、お役所はさすがにそれらの所在を把握していました。
郷土の文化財として、きちんと大切に考えているんですね。
なのに業界では「鳥取に石造物はない」が定説だった。
「やっぱり、自分で歩かないかんな」と改めて思いました。
さて、そんななかで出合ったのが今回の主役、広瀬一石彫成五輪塔です。
出合いがしらの感想は、
「おっ、オシャレすぎる~!」
なんなんでしょうか、このまったく違和感のない、スーッと入ってくるような優しい形は。
よしよし、ってしたくなります。
娘や息子の頭を撫でるときの感覚です。
「もう、よだれが止まらない……」
品が悪かったら、すみません。
でもこの表現、今後もたびたび使うことになると思います。
私にとってきれいな石造物は大好物で、おいしそうな料理を前にしたときと同じ気持ちになるのです。
初見時の感動までお伝えしたいと考えたら、またもや文章が長くなってしまいました。
次回も広瀬一石彫成五輪塔について書かせてください。